2026年8月13日

「『怪談』劇場公開版4Kデジタルリマスター版制作メモ」を公開!

上映中!
カンヌ映画祭・審査員特別賞受賞作。美しくも恐ろしい幽玄の世界
『怪談』

今回の劇場初回公開版4Kデジタルリマスターのための修復作業の制作を担当した東宝様より、「4Kデジタルリマスター制作メモ」をお預かりできましたので公開させていただきます。

【状況】

映画『怪談』は1965年1月に初めて日本で公開されたあと、すぐに短縮バージョンの編集作業が行われた。これは、当時出品を控えていた国際映画祭の厳しい作品尺規程に合わせるためである。

本来183分あった作品が、この段階で161分にまでカットされている。(当時のカンヌ映画祭の規程は厳格で、現地でさらに上映プリントを40分をカットした、という逸話も残っている。)残念ながら、この短縮編集作業にはコピーしたインターミディエイト・フィルムではなく、オリジナル・ネガが使われたため、初公開の状態は現存していない。

【素材】

今回の4Kリマスターバージョンは、初公開時の幻の183分版を高品質で復元するため、以下のマテリアルを組合せて作業を行った。

  《使用素材》
 1. 短縮バージョン:オリジナル・ピクチャー・ネガ
 2. 初回公開バージョン:インターミディエイトポジ
 3. 初回公開バージョン:オリジナル・サウンド・ネガ

2.は90年代に発見された、初回公開オリジナルバージョンのコピーだが、複数の欠損部分があり、残念ながら完全ではない。唯一の完全尺は3.オリジナル・サウンド・ネガのみであり、音に合わせて画を同期させる必要があった。しかし、音だけでは正確にオリジナルの編集を割り出せない部分が多かったため、当時本作品の仕上げを担当したフィルムラボが保有していた「カラータイミングシート」を頼りにした。このシートには、各カットの色調整の値と合わせ、カットの順番・尺・内容が詳細にメモされていたためである。もちろん、過去にリリースされたビデオマスターも参考に加えている。

【映像】

品質の観点から、オリジナル・カメラネガを多く含む1.を優先的に使用し、カットされた部分や、リテイクされている合成カットなどは2のひと世代の複製を経た初回公開バージョンのものを使用。

多くのパラゴミや傷の除去、フリッカー(明滅)の軽減、傷や破損箇所の修正を行ったうえで、フィルムの粒状性コントロールを実施。素材に拠る品質差をなくすとともに、上映プリントフィルムの質感を再現している。

グレーディングは、スクリーンで視聴できる環境にて実施。1996年に小林正樹監督が監修したレーザーディスク用マスター(短縮バージョン)の色調バランスを採用した。また、このマスターには含まれていなかった欠落部分、特にオープニングのクレジットの背景の淡い色彩は、すべて「カラータイミングシート」の初号プリント指示を反映した結果である。

【音声】

他方、音声に関してはサウンド・ネガよりダイレクトにデジタル化し、劣化によるノイズを除去し、音の歪みや揺れも補正している。全ての環境音・効果音から、光学録音のリレコーディングで発生するノイズまで様々な要因を細かく割り出したうえで、ダビングステージの音に近づけることを意識した。本作の大きな魅力の一つである、武満徹が設計した音響を正しく感じられることを願っている。

《スペック表》
画ネガスキャン:Scanity HDR、4K Over(4300×3164) 10bit
音ネガスキャン:Sonder Resonance, 96kHz 32bit
製作:東宝株式会社
製作協力:TOHO Global株式会社
制作:TOHOアーカイブ株式会社
4K DCP(スコープサイズ)/カラー/183分